AI(人工知能)研究に関する今までの歴史と現状を知ることができる本です。
東京大学の教授である松尾 豊さんが書いた著書で、自身の研究経験での知見を含め現状を分かりやすく解説してくれています。
こちらの本の感想を書いていきます。
どんな人におすすめか
- 人工知能を学び始めた入門者
- 技術的な内容でなく、概要を知りたい人
- 人工知能を利用したいと漠然と思っている人
人口知能の研究者が書いていますが、内容は易しく人工知能の入門書という位置づけです。
人工知能に関する普遍的な概念を分かりやすくを教えてくれ、流行りだけを追いかけた内容ではないので大変勉強になります。
現状を正しく学び、過度な期待や世論に振り回されず正しい知識を身につけられると思います。
人工知能の概要を正しく知るという目的には合っていますが、
具体的な作り方や、利用例などは載っていないので、技術書などの別の方法を学びましょう。
本の構成
前半で研究者と世間の認識のずれを指摘しながら人工知能の概念を説明し、
中盤では人工知能の現状を正しく伝えています。
後半は今後どのように未来が進んでいくか希望を含め解説しています。
著書が専門家のため、願望や妄想ではなく、根拠が伴う意見を述べているところが他の書籍とは違います。
感想
専門的な分野を分かりやすく解説している
専門家視点と世間の目線で人工知能とは何かを説明したり、ロボットとの違いを解説しているため、人工知能の概念をしっかり把握することができます。
人工知能の進化の過程を具体例を出したり、分かりやすいたとえ話を交えて、専門用語もあまり使わずに説明してくれています。
また、近年注目されているディープラーニングの何がすごいのか、どうして急激な進化を遂げているのか、読者が気になっているであろう部分の内容も十分に含まれています。
技術的な話だけでなく、人工知能分野での今後の日本の立ち位置や、人工知能が将来的に人間にどのように影響してくるのかについて筆者の意見が述べられていて、これからがとても大切な時期であると思えました。
人工知能分野に興味が出るとともに、学ぶ意欲も高まるような1冊です。
人工知能の変遷が経験を元にリアルに書かれている
今まで何度かあった人口知能ブームのそれぞれの違い(探索・推論の時代、知識の時代、機械学習・表現学習の時代)が背景となる基礎技術とともに分かりやすく解説されています。
また、各ブームの間に冬の時代があり、その間にも研究者が熱心に技術発展に寄与していることが今日につながっていると感じられました。
ブーム時の過度な期待や冬の時代での世間からの評価の冷たさ(人工知能は虚言と言われる)の中で研究が進められてきたことを知ることができます。
今回のブームでは何ができるようになって、何ができないのかを説明されているので人工知能の現状を正しく把握することができます。
人工知能に関する普遍的な知識を得ることができる
流行りに乗った内容ではなく、人工知能の根幹となる知識を得ることができます。
人工知能分野の長年の課題であるフレーム問題、シンボルグラウンディング問題をはじめとして、機械翻訳の難しさ、特徴量の調整の難しさなどが書かれています。
またディープラーニングの飛躍のカギが頑健性であることも解説していて、この知見はあらゆる機械学習にも応用できるような重要なエッセンスとなるでしょう。
このような時代に流されないような内容も多分に含まれている書籍となっています。
書籍の情報
出版社 | KADOKAWA |
著者 | 松尾 豊 |
発売日 | 2015年3月9日 |
定価 | 1,400円(税別) |
ISBN-10 | 4040800206 |
判型 | B6・264ページ |
コメント